Panasonic FZ200 |
Panasonicはおもしろいコンデジを作る。だいぶ昔から、この手の高倍率ズーム機ではなかなか良い線をいっていたと思っているが、今回はさらに画期的なものを作ってきた。
超望遠で撮る。被写体は何だろうか。盗撮のたぐいは論外だが、私などはスタジアムやグラウンドでのサッカー、あるいは野球やラグビーなどのスポーツが思い浮かぶ。野鳥の撮影などに利用する人も多いだろう。トレッキングをしながら野鳥の姿、あるいはカモシカなどの野生動物を撮影したいと考えれば、一眼レフに600mmを持ち歩くようなことはきわめて困難だ。500mmのミラーレンズくらいだったら良いだろうが、それだけというわけにはゆかないからもう一台持ち歩くか、レンズ交換をするか。野生動物だとレンズ交換している時間も惜しいだろうから、やはり即座に撮影可能な体制で臨みたい。スポーツでも、学校のグラウンドであれば比較的狭いし、すぐそばから撮影できる。だがスタジアムとなると広いし、席が一番前であるとは限らない。となると、長くて明るいレンズが欲しいわけだ。
FZ200は、4.5~108mm。35mm判換算だと25mmから600mmまでを、F2.8の明るさがカバーするというすごいレンズを搭載している。これが可能だったのは、1/2.3型という小さい撮像素子を使っているためで、撮像素子が小さいとレンズも小さくできるので、こんなすごいレンズが可能になったわけだ。その代わりに小さくするための代価は支払わねばならず、増感性能については不利になる。
1/2.3型1210万画素なので、1/1.7型1010万画素のLX7よりは画質的に厳しいだろう、増感性に劣るだろうと言うことが予想される。いやそんなことはありませんとメーカーは言うかもしれないが、そしたらLX7は何なのってことになる。同じメーカーが同じような技術を使って作るのだから、当然画素サイズの大きいLX7が有利なのだ。ただ、増感が厳しい撮像素子だからこそ、超望遠でありながらF2.8というレンズの明るさが生きてくる。これは他社を含めて他の超望遠コンパクトの中で、もっとも優位であることは確かだ。
レンズが明るいと、シャッタースピードも速くできるのが大きい。F5.6のレンズであれば、1/60のシャッタースピードしか切れない場面でも、F2.8のFZ200なら1/250が切れるのだ。これはスポーツの撮影ではとても大きな意味がある。どれほど手ぶれ補正が優秀でも、被写体ぶれは起きてしまう。自動車のように形の変わらない被写体であれば、1/60や1/30で流し撮りをするというのも良いのだが、人間や犬などは形が変わる。水平に流し撮りができたとしても、顔の位置そのものが上下するのは流し撮りでは吸収できない。経験的に言って、1/125から1/250くらいがスポーツの流し撮りではおすすめの値になる。よりしっかりと、ぶれを減らして写したければ、1/500から1/1000が欲しいのだが、増感性能のひくいコンパクトデジカメと、暗いレンズの組み合わせでは、晴天順光、日の当たっている場所以外ではこの値を確保してきれいに写すことが難しいのだ。薄曇りくらいが限界で、暗い曇りになってしまうと、もうコンデジでは対応が難しくなる。しかしF2.8のFZ200であれば、曇りの日くらいまでは対応できるだろう。それだけ撮影できる範囲が広がるのだ。ナイターでも大きなスタジアムの明るい照明であれば何とかなるだろうが、ローカルなグラウンドの暗い照明や、学校体育館の中でのスポーツだと、やっぱり厳しいかもしれないな。
もう一つ特筆するべきは、メカシャッターで秒12コマの連写性能を確保したことだ。これはS-AFに限られて、C-AFの場合は秒5コマになる。とりあえずS-AFの秒12コマはすごい。最高級クラスの一眼レフでもなかなか秒10コマを超えられなかった。プロ用と言われる機材でも秒8コマくらいであったりしたのだが、それをあっさり12コマまで達成してしまっている。これも、撮像素子が小さいことの恩恵だろう。撮像素子が小さいと言うことは、シャッターが横切る範囲狭いので、それだけ短い時間で動作が可能になる。したがって大きい撮像素子よりも高速な連写が作りやすいのだ。S-AFなので、前後に動く、向かってくるような被写体にはあまり適当ではない。しかし左右に横切って動くような場合だと、撮像素子が小さいので被写界深度が深く、S-AFでもカバーできることが多い。たとえて言えば、サッカーをゴール裏から撮影すると、向かってくる被写体が多いのでピントがずれやすく、S-AFでは厳しい。しかしピッチのサイドから撮影すると、選手の動きは左右に動く場合も多いので、S-AFで被写界深度でカバーでもかなり撮れる。特徴を理解して撮影を工夫すれば、そこそこカバーできると言うこと。
C-AFも秒5コマとなっているのだが、これはどうも、私は好まない。秒5コマでもそこそこであり、子供のスポーツくらいだったら十分なのだが、コントラスト検出式のC-AFはあまり気持ちよくないのだ。
推測も含めての話であるが、位相差AFの場合は、A地点で測距してピントを合わせて撮影し、被写体が動くとB地点で測距してピントを合わせ、C地点で測距してピントをあわせと、順次ピントを送っていく。ところがコントラスト検出式では、A地点で、そのあたりでコントラストを探して前後してピントを合わせ、ついでB地点でもその前後をコントラストを探して前後して、C地点でもコントラストを探してと、まあ使った感じで言うと、ピントが絶えず外れ(コントラストを探している)ながらピントを追いかけているようで、ぬるぬるしたというか、気持ちの悪いピント移動なのだ。結果的にはそれでもピントがあって、秒5コマでピントの合っているカットが撮れているのだろうと思うが、撮っている感触としては全部ピンぼけのような気分での撮影になる。とても使い心地が悪いので、私はS-AFを工夫して撮影するようにしている。
ここのところ、結構パナソニックのコンデジ、LX7とFZ200について褒めちぎってきたけれど、(えっ、そう思わなかったって? いや、ほめたんだよ、これでも(汗))、何を評価したのかというと明るいレンズや連写性能という部分だ。こういう部分での進化は、本質的な進化だと思うし、コンパクトデジカメの特質を、短所をカバーするのではなく長所として活かす方向性の開発であり、とても有意義なものだと思っている。
逆にパナの超解像技術であるとか、何とかズームなどは無視してきた。どこのメーカーもその手のことがらを売りにして、トップに持ってきて宣伝したりしているが、私はどうでも良いと思っている。これから、無視していくだろうな。
メーカー諸氏よ、本質的な改良を頼むよ。