Smartphone Film Scanner |
http://camp-fire.jp/projects/view/561
とてもおもしろいと思った二つの事柄。
一つ目は、スマートフォンをスキャナーに利用する理由です。当然のことながら、専用のフイルムスキャナー、一眼レフを利用したフイルムスキャナーよりも画質が劣ります。それでもスマートフォンを利用するのは、一つには普及度合いが高く、顕在ユーザー層がとても広いこと。そしてスマートフォンが写真鑑賞の主立ったデバイスとなりつつあり、そこに取り込むことが最終地点となりうること。すなわち、PCや一眼レフで取り込んだ場合は、そこからスマートフォンに転送して、そこで見たり、友達と共有したり、SNSに投稿したりするわけですが、それだったらはじめからスマートフォンに取り込んだ方が早いわけです。
プリントを主たる鑑賞手段としていた時代には、簡易な取り込みでのクオリティの低さが問題でしたが、スマートフォンやSNSが主たる鑑賞手段となっている現代では、スマートフォン搭載カメラの画質でも十分だと言うことでしょう。加えて、画質が劣化する部分があれば、むしろノスタルジックであり、好ましいという場合もあるでしょう。ノスタルジー(低画質)を売りにしているLomoであればこその発想かもしれません。
そしてさらにおもしろいと思ったのは、出資者を募っていることです。ページにあるように、500円から15万円までの出資を募っています。私が見た時点ですでに10人、5500円が6人と8000円が4人と言う支援者がいました。Lomoのような、フイルムを使うビジネスが、どこまで継続可能なのか、これは難しい問題です。根本的にフイルムの製造が止まってしまえば継続は出来ません。さらには現像の問題もあります。フイルム現像で出される廃液処理は、環境保護の高まりの中で難しくなりつつあります。大きなマーケットの中では解決策はあるでしょうが、次第に縮小しつつあるマーケットの中では、工場規模での採算は難しくならざるを得ません。
東欧などで、おそらく小規模と思われるメーカーが、モノクロフイルムなどを生産しています。こういった小さなビジネスはまだ生き残る時間が長いと思われます。モノクロであれば、現像液を調合して自家現像することもできます。廃液についても少量ですので、家庭の廃液にまで厳しい規制が及ぶまでには、まだまだ時間があるでしょう。簡単には無くならないであろうフイルムの世界ですが、規模が縮小してゆくのは確実であり、そのなかでLomoのようなメーカーが生き延びることが出来るのかどうかは、難しいところです。デジカメと違ってフイルムカメラは、1台買えば20年~30年は使うでしょう。今後売り上げが増える、ことは期待薄だろうと思います。
それでも続けるためにはどうしたらよいのか、ということで支援者を募ろうと言うことでしょう。
やっぱりフイルムが良いよね、と言う人は大勢います。しかしながら、毎週フイルムで撮っているよ、と言うアマチュアカメラマンは、まずいません。数ヶ月に一回、フイルム数本、その程度です。それでは、フイルムのマーケットは支えられません。それでもフイルムがよいと思っている人にとっては、こういったプロジェクトを支援することでフイルム継続に貢献することが可能です。損得で言えば、あまり得をしそうな感じではありませんけれど、支援者の募集ですから。フイルムが良いと思う人にとっては、わずかな金額で貢献できるなら、良いのではないでしょうか。
ただしこれ、年に何回とやり始めると、支援にも限界が来ます。この企画はおもしろいのですが、今後の展開にどういうアイデアを持っているのかは、注目です。