2013回顧、ニコン |
ニコンの2013年を象徴するのが、Dfでしょう。
Dfは一応の成功を収めているようです。それにはニコンならではの事情が絡みます。つまり、ニコ爺ともよばれる、オールドなファン層を抱えているからです。そのファン層にとっては大きな問題、ニコンが言い続けてきた「Fの互換性」というお題目が、ようやく実現されたのがDfであるからです。物理的形状としてのFマウントの互換性は保たれてきて、そのおかげでDfによって古くからのFマウントレンズまで使えるようになりましたが、大きなAiと非Aiの壁を始め、細かくは瞬間絞り込み測光の機種でのトラブルなど、「Fマウントのレンズが使えますか」と詳しくない人から訪ねられたとき、非常に返事に困るのがFだったのですが、Dfでそれが解決されて、ようやく「Fマウントの互換性」が実現されたと言って良いでしょう。昔ながらのニコンファンにとっては、大きな出来事です。
これがもし、キヤノンがキヤノンF-1Dを作っても、ここまでは受けなかったでしょう。もちろんFDとEFというマウントの全面変更があって、ここに互換性を持たせることは出来ないという部分もありますが、仮に可能だったとしても、Dfほど受け入れられはしなかったと思います。
このオールドファン層がニコンにとっての大きな財産であることを示したDfの登場でもありましたが、そうです、古い財産は、財産でもあり、足かせでもあり、今評価されたと言うことが、今後にとってマイナスになってしまう可能性も、十分あるわけです。
ニッコール倶楽部を中心としたオールドファン層、平均年齢は70歳にもなっているでしょう。あと10年たったとき、再びニコンを支えるほどの購買層となっているかどうか、難しいでしょう。確実に減りつつある、もうそれほど時間の残されていないファン層です。そのためにFマウントを引っ張ることが何を意味するのか。Dfは諸刃の刃といえるのです。
ニコンというブランドのおかげで、低価格のコンパクトもそこそこには売れているようですし、比較的堅調に推移しているともいえますが、高級コンパクトへの取り組みはよわく、P7800やP330など、出遅れの感が否めません。APS-Cクラスのコンパクト、CoolpixAも、趣味路線に訴えようとしたのでしょうが、価格の高さもあって訴求力はいまいち。一眼レフは低価格普及機が売れてはいますが、ミラーレスにおいてはNikon1にも「これ」と言うべき機種が無く、レンズ内手ぶれ補正にしたおかげで単焦点レンズでは手ぶれ補正が効かず、操作性も簡略化されて上級者向きではなく、正直さえないラインのままです。
その中で、大きなエポックはレンズ交換式水中カメラ、Nikon1 AW1でしょう。レンズ交換式の水中カメラは、歴史上でもニコンだけではないかと思います。かつてのニコノスからずいぶん時間がかかりましたが、このタイミングで出てきたことは驚きでした。
個人的2013年カメラグランプリは、Nikon1 AW1か、ソニーのα7のどちらかだと思っています。野球に例えれば、Nikon1 AW1は盗塁150個で世界記録を作り、α7 はホームラン70本であっと驚かせた感じ。オリンパスのOM-D E-M1は200安打で貢献度は高いのですが、MVPに選ばれるにはインパクトが足りなかったかなと。12-40mmF2.8とのレンズセットで評価すると一番ですが、ボディ単体だと驚きが足りなかったか。
AW1は潜れる深度も浅く、水中広角レンズが不足するなどまだまだ本格的ダイバーのニーズに応えられる物ではありませんが、かつてのニコノスからRSが登場したように、今後はさらに本格的機種へと発展も可能でしょう。
ニコンは、今まで築き上げてきたブランド力に助けられた一年でした。が、それがいつまでも続くかどうかは、不安も残ります。Nikon1にボディ内手ぶれ補正をいれ、液晶も動く本格的仕様の機種を出して、Nikon1ブランドも確立してゆくこと。またCoolpixAを含めてハイエンドのコンパクトに力を集中してゆくこと。今年、他社に比べると低価格コンパクトの販売も堅調であったと言うことは、来年もそうだと言うことではなく、逆に高級路線に早くシフトした他社に後れを取る要因とも成りかねません。
古い財産が活きた一年でしたが、2014年が古い財産に縛られて苦しむ一年とも成りかねない裏表なところもあります。
ニコンのやり方は何がどうなろうと変わらないだろうとも思いますが、高齢化だけは避けられないこと、それに対応するのには時間も必用ですから、早く気がつくことが必用でしょう。